MyArt初イベント企画
~上野でアートを楽しもう。~
2016年1月30日、芸大の卒業制作展を見るツアーを行いました。前日には雪との予報の中、天気はくもり時々晴れ。
毎年、受験生と関係者で大変混み合う藝大の卒展ですが、午前中は比較的落ち着いた会場となり、私も一安心でした。
今回のツアーに協力してくれた油画助手さんから、展示を見る上で、作品にぶつかったり触れないようにだけ
気をつけようと注意をしてもらいこどもたちとドキドキしながら、エレベーターに乗り込んで展示会場に向かいました。
大学構内(絵画棟)の展示は小さな小部屋に次々と作品が並ぶ展示です。
作品は絵画だけでなく、映像や写真、立体などさまざまです。
そして、ほぼ説明がありません。。
現代美術をあまり見る機会のないこどもたちや家族の皆様からすると、これは何??が並んでいるばかり。。
藝大卒業生の私にとっては当たり前の光景なのですが、こどもたちにしてみるとなんじゃこれ?という感じです。
この点については私から作品の見方について説明不足だったとの多くのご指摘をいただきました。(申し訳ございませんでした。)
作品の鑑賞方法について
学生の多くの作品に説明がないのは、作品を見てこれは何?どういう意味があるの?と見る人が考えるために
あえて説明が少なくしています。見た人が作品を見ながら、ふしぎだなと思うことに気づき、考え、想像をめぐらして、じっくりと心に刻むことが現代美術における鑑賞方法です。
※そうした鑑賞方法の大前提をお伝えすることを忘れないよう、気をつけたいと思います。
こどもたちと作品を鑑賞すること
こどもたちと作品を見て回ることで作品を普段よりじっくり見ることができたとの声を多くいただきました。
私自身も大変同感です。こどもたちが作品について必死にメモしたり、何が描かれているか話すことで
周りの大人をも積極的に鑑賞に巻き込んでしまう力にとても驚かされました。
こどもたちが理解できないものとの出会いは、そこで答えが見つからなくても、わからないなりに、考えを巡らすことにつながります。
こどもたちの好奇心あふれる姿を見て、こういう機会はまちがいなく必要だと感じました。
ツアー終了後、
参加いただいた皆様にアンケートを通してツアーのご感想や藝大についてのご質問など多数いただきました。その一部をご紹介させていただきたいと思います。
Q1 藝大についてどう思われましたか?
A 好きな事に打ち込める素敵なすごい学校だと思いました。学祭も行ってみたいです。
A 昔に比べて設備が新しくなっており、上野という場所も創作環境として落ち着いていて素敵だと思いました。
国立の学費であのサイズのスタジオや道具へのアクセスがあるのは魅力的だと感じます。
A 教室も広くて環境も静かで想像力&創造力を養い学ぶには良い
場所だと思いました。
A 小規模ながらも、環境、雰囲気、大学の佇まいそのものが、
非常にアーティスティックで、
創造性をかきたてられる素敵な大学だと思いました。
A 教室も広くて環境も静かで想像力&創造力を養い学ぶには良い場所だと思いました。
A テレビや雑誌で見かけたイメージではかなり奇抜な大学だと思い込んでいましたが、奇抜なものもあれば斬新なものや実用的なものもあって
一言では片付けられない面白い大学だと思いました。
A 楽しそうだと思いました。これが私だという主張と藝大生であるというプライドを強く持っていると感じました。
Q2 学生の作品を鑑賞してみて何か印象に残ったこと感じられたなどありましたか?
(ネガティブなことポジティブなことなんでもどうぞ!)
A 人と違う新しいものを皆さん作られてて、さすがだと思いました。私自身がど素人なので上手く感じとる事ができない部分も多かったですが、素直に色々観られて面白かったです。この作品にどれくらい時間をかけて作られたんだろうと思いました。
A 創造活動の意味について考える機会になりました。絵や造形物は、言語と同様に発信者の気持ちや考えを他者に伝えるためのツールなのだと感じます。手先が起用だったりデッサンの訓練をたくさんしていることで「絵がうまい」と言われる生徒がほとんどだろうけれど、ではそのツールを用いることで、他のツールでは表現しきれないことを受信者に分かりやすく伝えているのか、さらにはそもそも人に伝えたい、訴えたい本質があった上で創造活動をしているのかと言うと、それが見えにくい子も多い印象を受けました。ある程度の器用さを持ち合わせ、内から沸き上がる主張を持っており、それをユニークな手法で表現するオリジナリティが揃わないと、芸術家として大成するのは難しいのかな、と思いました。藝大は芸術家の輩出を目指しているのか、そもそも学生は芸術家になりたくて進学しているのかどうか分からないけれど、もしそうだとすれば、センター試験と実技での選抜によって芸術家のタマゴを発掘するのは難しいのではと思いました。既に芸術家として確立した人達の作品群を美術館で鑑賞するという贅沢に慣れてしまっている中、学生達の荒削りさや試行錯誤の渦中にある悩ましさなどを体感することができ、新鮮な経験になりました。若者の葛藤を共有することができて面白かったです。
A 自由な表現に、非常に刺激を受けましたが、独創的でなければという潜在的な意識からか、せっかく積みあげてき
たであろう伝統的技術をうまく生かしきれていなくて、もったいないと思う作品もありました。
A まるでおもちや箱のように当たり前ですが、一人一人全く違う表現の作品にワクワクしました。
好きなタイプも苦手な?もしくはよくわからない作品も含めて楽しめました。
A 独自の感性を持った学生さんたちの型にはまらない作品に、非常に感銘を受けました。
油絵科なのに映像を使った作品も多く、その自由な発想や学生の発想を許容する大学の姿勢にも素晴らしいと感じました。
A 作ったり、絵を描く技術などの器用さのレベルを競う他に、何を表現したいのか、何を作ろうかと言うアイディアを生み出すことがとても重要なんだろうなぁと感じました。人それぞれの技術や想いや気持ち、経験や知識や発信したい題材のパワー、日々の生活で造られた個人のアイデンティティー全て芸術には必要なんですね。後は時間や材料費もかしら。(≧∇≦)作品はへ~と感心する物から、おいおいとツッコミを入れたくなるものまで様々でした。一般の美術館ではここまで色々気にして見ないので大きな発見&収穫でした。
A
・大きな飴を舐めて形を作っている学生さんやたくさんのモビールを吊るしてある部屋など、一つのキャンバスや彫刻だけでなくその行為や空間自体が作品になるのだという事が自分の中で新しく、印象に残りました。
・あたりまえかも知れませんが、美術を深く考えていて、非常に繊細な世界だと思いました。芸大の生徒さんがお互いの作品を見るときと、私たちが見るときではみえかたが違うのだろうな、という印象をうけました。
Q3 こどもたちに聞きます!色んな作品を見てどう思いましたか?
A 難しいものや怖いものもあったけれど、色々見る事ができて楽しかった。
なかでも、さわったりできる物が面白かった。
大人だと思った。(前に高校の学祭に行ったので大学は大人と感じたみたいです。)
A 「テーブルに壊れた人が倒れてて、黒い水が流れてるのが、すごかった」そうです。
ずっと見てました。
A
・本当のミュージアムの方が、どうしてそういうものを作ったのかが分かりやすいと思う。
(=卒展よりも、一般の美術館の展示の方が制作意図やコンセプトの説明がしっかりなされているので、
脈絡が理解しやすい。)
・絵が上手な人はいたけど、木が床に落ちているやつ(インスタレーション的なもの)とか、ビデオ(映
像系)を見せていた人は何がしたいのかわからなかった。
A 絵をかきたくなった!が第一声でした。
作品を正面からでなく真横から見て、絵の具のでこぼこが面白い!
いろんな色で書いていいんだね と言って日曜日は絵の具でたくさん絵をかいていました
花の絵をかいていたのですが、いつもと反対の色でしかも、たくさんの色を使い(花は緑系、葉はピンク系)のびのび
とかいたようです
たくさんの刺激を受け、上手にかけなくても楽しんで書けばいいのかなと感じたようでした。
A みんな色々な作品が作れてすごいなと思いました。
特に部屋の中に竹がたくさん浮いていた作品が、山の中にいるみたいで好きでした。
A 今まで校舎に入る機会が無かったので、たくさんの作品を見ることが出来で楽しかった。
ぼくにも作れそう。*\(^o^)/*
A うきうきして、楽しかった。
Q4アートツアーについて何かご意見、ご感想などありましたらどうぞ。
A 高い水準の芸術が、こどもたちに身近に感じられる今回のような企画を、また将来ぜひ、お願いします。
A とても良い機会でした。 また参加したいです。
美術館で名画を一点決めて鑑賞し、
子供達と先生で作品についてトークセッションの機会があれば、子供なりに絵を真剣に考えて見るのも
楽しいような気がします。
A 自由なペースで作品鑑賞をさせていただけたので、マイペースに楽しむことができました。院生の展示に
おいては、三輪先生のお友達の油絵の先生からも作品の制作方法等について説明をしていただくことがで
き、いちげんさんとして行ったのでは味わえない経験になりました。
全般的に作品や作者に関する説明が非常に少なかったので、なぜこの学生はこうした空間を作りたかった
のか、これらの絵から何が伝えたいのか、想像力をフル稼働しながらの鑑賞でした。解釈方法は一つでは
ないのですべてが正解なんだろうけれど、少なくとも制作者の意図を一つの解として知りたかったです
A 藝大にはじめて行ったのですが、大学構内や学食を拝見できて、純粋に楽しかったです。
また、彫刻のモチーフのある部屋の採光の素晴らしさには大変驚きました。曇りでも電気なしであんなに明るい設計
があるなんて、さすが藝大だと思いました。
A 今回、このような機会をあたえてくださってありがとうございます。
学生というちょっと身近に感じるかたたちの作品だったので、普段よりも興味をもって観賞していたように感じます。それから先生がいてくださることで、疑問をすぐに確認できる環境が楽しかったらしく張り切っていました。
また、このような機会があると、うれしいです。
A 藝大に行ったり、藝大の卒業生の方や絵画教室の生徒さんと交流できる事は無いので良い機会だと思いました。
A 内部の人や先生のような卒業生さんに案内してもらえると、見ただけではわからない情報ももらえて、一層楽しく
見れました。
A 作品の解釈などいらないのかもしれませんが、子供にもわかりやすい作品で、作品の鑑賞の仕方というか味わい
方を子供に伝えてもらってもよかったのかなと思います。
A 藝大の最初の部屋をまわる際はデリケートに配置されていたので我が子が作品を壊さないかヒヤヒヤしました。
美術館の方の卒展は最後まで観られませんでしたが、子供的には満足していたみたいなのでこれぐらいの時間で良
かったんだと思いました。
Q5 藝大生や、大学についての質問コーナー
※参加者さんからいただいた質問に私(三輪)がお答えします。
・自分のこどもが芸大を目指したいと言ったら、賛成されますか 反対されますか?
どうでしょう。。ただ「藝大を目指したい!」と親に言える子どもの意思は尊重したいなと思います。
今の時代、「人とちがうことをやりたい!」という独創性より、
「すべてを完璧にこなしたい。」という万能さ、器用さをに憧れを持つ人が多いような気がします。(多分)
その中で「藝大に入りたい」と言える子には逆に可能性を感じてしまいます。
(近い将来ロボットが多くの職業を代替する時代に人間にしかできない想像力や発想力の方が大事だと思います!)
・どのような人が藝大に合格することができるのでしょうか?
私の周囲の話を聞くと、ご両親が芸術関係や教育関係の子が多くて、
こどものころから美術に興味関心を持っている家庭環境の出身者は多いんじゃないかなと思います。
現役合格の学生の中には、高校時代から本格的なコンペで入賞するような早熟な才能の持ち主もいました。
(藝大受験について)
受験生の多くは高校1、2年から予備校に通い始めていると思います。
高校の美術部で上手に描いてても、試験で求められる短時間で絵を描く技術や、絵の構成力などはなかなか
身につかないので、最低でも1、2年は予備校に通って試験の傾向と対策を学ぶ必要はあると思います。
油画科の場合、傾向と対策しずらいような試験なので絵が上手な学生が受かるとは限らず、どんなタイプの絵が受かるかどうかは本当にわからないと思います。合格するのは、その年の試験にうまくハマった学生だと思います。
他の(工芸、日本画、デザイン、建築)学部に関しては詳しいことはわかりませんが、
美大予備校である一定のレベルをクリアした学生だと思います。
また先端芸術学部の試験は、実技ではなくAO入試になります。
・藝大生の卒業後の進路について教えてください。
藝大は作家(アーティスト)を育てることを目的としています。将来どうやって稼いで生きていくかは自分で考えるしかありません。多くの学生は、アルバイトなど副業をしながら卒業後も作品を作り続け、発表する環境を整えるように努めています。新卒で就職する人ももちろんいますが、卒業後しばらくしてから就職する人などさまざまです。いずれにせよ卒業後、自分の将来を見極めて創作するなり、就職活動するなりしていれば、さまざまなジャンルで藝大卒のキャリアは活かせると思います。
・美術系大学はお金がかかるのでしょうか?
美術系大学は、他の一般的な大学に比べるとお金がかかると思います。
私立美大の授業料は年間150万前後だと思います。
藝大の授業料は年間50万程度です。
藝大はさまざまな財団や組織からの奨学金制度が充実しているので、奨学金はもらいやすいと思います。
また在学中に優秀な成績を収めれば奨学金の返済を一部免除することは十分可能だと思います。
海外の芸術を学ぶ大学との違いはなんですか?
美術の本場は欧米中心ですのでそうした環境のちがいは大きいと思います。
ロンドン、ニューヨークがアートの中心なこともあり、有名な芸術大学も多いです。街にはアーティスト志願者は山ほどいる環境なので日本より海外の大学のほうがよりシビアな競争になります。また留学した人たちの話を聞くと
市民のアートへの関心の高さが日本と海外の大きな違いだとよく聞きます。また日本のアートマーケット市場もこの15年ほどで成長してきて、日本の中でもアートへの理解やアーティストに対する支援なども増えているようです。
・在学中に作品のアートディーラーや企業などの買い手側の意見など聞く機会などあるのでしょうか?
大学の講演会でオークション会社や、ディーラーなどアートを買う側の方の話を聞く機会はあります。
また積極的な学生は、自ら作品を持参してギャラリーに出向き、売り込みの交渉したりしています。
学内での作品発表だけでなく、さまざまなコンペに出したり、貸しギャラリーを借りて作品発表したり、
国内外のアートプロジェクトに参加するなどしてアート関係者とのつながりを作り、作品評価してもらえるよう営業努力している学生もいます。その中でさらに優秀な学生は在学中から有名なギャラリストから声をかけられたり、作品が美術館に買い上げになる話もあります。
アートツアー及び、アンケートに参加協力いただき、どうもありがとうございました。
皆様のご意見を参考に今後のアートツアー及び鑑賞の場をよりよいものにするよう努力したいと思います。
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