国吉康雄展「少女よ、お前の命のために走れ。」

横浜そごう美術館で開催していた国吉康雄展に観てきました。

国吉康雄とは、20世紀前半に10代で渡米し、アメリカ美術界で最も優れた画家として賞賛を受けた日本人画家です。生前、日本ではあまり評価されませんでしたが、近年評価が高まっています。

 

プリミティブで幻想的で温かみのあるグレイッシュな色彩と、デフォルメされた人物や飄々とした風景や静物画は有名です。またアメリカの大学で教鞭をとるなど優れた教育者としての評価も高いのです。戦前戦後、日本とアメリカを行き来しながら、在米日本人の芸術家としてアメリカの民主主義を支持し、日本の軍国主義を批判しました。描かれた女性像は髪や肌、目の色を国籍がわからないように表現されています。

国吉は常々アーティストとは「自らが何を代表する立場なのか?」を常に考えなくてはならないと学生に問いかけていたそうです。

セザンヌ、シャガール、パスキンなどさまざまな影響も透けてみえるのですが、絵から伝わる当時のアメリカの姿のリアリティとそれに対する失望感が見てて心地よいです。

 

戦争と工業化によって時代が大きく変化した100年前と、現代はよく似ていると色々なところで言われていますが、その時代に生まれる芸術や人々の思想に何かしらの共通点が見出せたらおもしろいなと感じました。